2024年4月7日
こんにちは。
脳性麻痺の治療、手術の続きです。
前回手術としては
・痙縮(筋肉の緊張の高まり)を改善する手術
・関節の脱臼や骨の変形を矯正する手術
の2つに分かると書きました。
痙縮を改善する手術について書きます。
痙縮を改善する手術は以下の3つがあります。
1.整形外科的手術(筋解離術、腱延長術)
2.ITB療法(バクロフェン持続髄注療法)
3.SDR(選択的脊髄後根切断術)
今回は筋解離術、腱延長術について書きます。
痙縮では主に関節を曲げる筋肉が必要以上に強く収縮(縮む)してしまいます。
筋肉は脳からの電気信号で伸び縮みしますが、脳性麻痺では脳からの電気信号がスムーズに働かなくなっています。
筋解離術、腱延長術では筋肉を長く延長して筋肉の過度の緊張をとる手術です。
Chirurgia. 2013から引用
筋肉の腱の部分を切り込みを入れたり、切ることで腱の部分が延長されます。
手術では主に筋肉の赤身の本体部分は傷つけず、腱の部分の延長を行います。
腱を伸ばすことで筋肉全体の長さが長くなります。
筋肉は収縮(縮む)して力を発揮するため、長くなると筋力自体が低下します。
さらに痙縮のあるお子さんでは多くの方で筋肉の収縮状態が長く、筋肉や腱自体が短縮しています。
痙縮で強すぎる筋力を低下させて正常に近づける手術です。
手術自体はそれほど複雑ではなく、腱の部分を小さく切るだけの手術で1つ1つはそれほど時間がかかりません。
だたし、下肢であれば股関節の周りの筋肉(腸腰筋、内転筋)、膝裏(ハムストリングス)、足首(腓腹筋)など複数の筋肉の腱延長をすることが一般的です。
上肢でも肩周囲(大胸筋、広背筋、上腕三頭筋)、肘(上腕二頭筋、上腕筋)、手首(橈側、尺側手根屈筋)、手(指の屈筋、母指内転筋)など多数の筋肉に行われています。
手術後にすぐに動かすことも可能ですが、傷や痛みがあるため2-4週程度ギプスや装具で固定使うことが多いです。
出血も少なく、体への侵襲は低めの手術といえます。
日本ではOSSCS(整形外科的選択的痙性コントロール手術)という名前でも呼ばれています。
九州出身の松尾隆先生が従来あった治療をまとめて体系づけられました。
当院に来ていただいている松尾篤先生のお父様で、主に九州、関東で数多くの脳性麻痺の方の治療を行われた先生です。
以上筋解離、腱延長術でした。