コラム

2024年4月7日

脳性麻痺について 治療 その18 痙縮改善手術 ITB療法 おなかにポンプの機械!?


こんにちは。

脳性麻痺の治療、手術の続きです。

 

痙縮を改善する手術は以下の3つがあります。

1.整形外科的手術(筋解離術、腱延長術)

2.ITB療法(バクロフェン持続髄注療法)

3.SDR(選択的脊髄後根切断術)

 

今回はITB療法(バクロフェン持続髄注療法)について書きます。

ITB療法はIntraThecal Baclofen therapyの略で脊髄を通してバクロフェンを使う治療となります。

バクロフェンとはGABA作動薬の一つでGABAとは脳の興奮を抑える物質です。

バクロフェンは脊髄のシナプス反射を抑制し筋肉の緊張を落とす作用があります。

飲み薬もありますがITB療法では注射薬を脊髄と通して持続的に投与します。

日本では2006年に承認された比較的新しい手術で徐々に広まってきています。

 

先方のポンプ機能のある機械を腹部の皮膚の下に手術で埋め込みます

同時にポンプから細いチューブをつなげて脊髄までカテーテルを挿入し、ポンプから薬液が持続的に脊髄のスペースに投与できるようになっています。

 

左:埋め込みポンプ 右:お腹にポンプを埋め込みカテーテルを背中の脊髄のスペースまで伸ばす (第一三共HPから拝借)

 

手術後にお腹の機械から持続的に薬が脊髄まで投与できます。

飲み薬と異なり一定して24時間効果的に薬を投与でき、直接脊髄に薬が投与できるため飲み薬よりも効果が非常に高いです。

薬の投与量も専用の機械で体の外から調節可能です。

 

薬は概ね3か月に1回程度ポンプに補充必要で、外来でお腹の皮膚から機械に注射器で薬を注入します。

機械はお腹の表面にあるため薬の注入はほとんど痛みもなく容易にできます。

機械自体は数年程度でバッテリーが切れるため、数年に一度機械の入れ替え手術も必要となります。

 

非常に筋肉の緊張をとる効果は強いですが、お腹に機械を入れる必要がある、数年に1度は入れ替え手術を要するなどのデメリットもあります

麻痺のある方は非常に痩せている方が多いため、機械をいれた部分は隆起して目立つ場合や手術した部分の感染により機械をいったん取り出す必要があることもあります。

 

お薬で筋緊張のコントロールが難しい、比較的麻痺の重度な方に行われることが多いです。

緊張が強くて飲み薬を増やても効果がでない、薬の副作用で傾眠が強すぎるなどの方には良いと思います。

実際に手術をする前にトライアルといって、脊髄に試しに1回だけ注射器で薬を入れて半日から1日程度薬の効果を見てから手術をするか決めます。

 

まだ行っている施設は多くないですが、痙縮治療の選択肢として知っておくべきだと思います。



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