コラム

2022年12月4日

血管腫、血管奇形という珍しい病気があります その2 脚長差


こんにちは!

血管腫・血管奇形の続きです。

 

前にも書いたように血管自体の治療は形成外科や放射線科の先生方が担当します。

整形外科の私は血管奇形が原因で起こっている関節障害や痛みの治療を行ってきました。

 

血管腫・血管奇形で起こる整形外科的問題

1.脚の長さが違う(脚長差)

2.関節周囲の血管病変のため関節の動きが悪い

3.痛み、足の血管病変のため歩きにくい、普通の靴が履けない

 

1.脚長差

骨は血管からの血流で栄養されています。

片側の下肢に大きな血管奇形があり血管が通常より多くなると成長期に血管奇形のある下肢が反対に比べて長くなります。

上図の右は片側の血管奇形で右脚が長くなっています。

左は外観は左脚だけです両脚の血管奇形があり左右で長さが違います。

 

脚長差は2cmを越えると骨盤のいがみが強くなるため腰や膝に影響が出ます

そのため2cm以上の脚長差は手術で治療することが多いです。

成長期のお子さんの脚長差の治療は

・短い方を伸ばす

・長い方の骨の成長を停める

 

骨を伸ばすのは以前にコラムで書いた創外固定器用いた骨延長を行います。

長い方の骨の成長を停めるのは手術で成長軟骨(骨端線・骨が成長する軟骨部分)にボルトを入れて

その部分の骨が伸びないようにします。

成長抑制術(保険では骨端軟骨発育抑制術)と言います。

一般的に血管奇形のお子さんでは2-4cm程度の脚長差が多いため骨延長よりも成長抑制術がよく行われます。

手術で入れる金属が3種類あります。

ステープル(最近しません)

スクリュー(PETS: percutaneous epiphysiodesis using transphyseal screw)

エイトプレート(よく使います)

成長軟骨に手術で金属を入れて、入れている間だけその部分の骨が伸びないため脚長差が改善します。

脚長差がなくなればもう一度手術で金属を抜けば再度骨が伸びだします。

成長抑制剤は手術時間も通常1時間以内で体へのダメージが少ない治療です。

金属が入っていても痛みもなく運動の制限もありません。

ただし血管奇形のお子さんの場合は手術する部位に血管病変があるため出血のリスクがあり注意が必要です

 

次に続きます。



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