コラム

2024年4月14日

脳性麻痺について 治療 その19 痙縮改善手術 SDR 神経を切る!?


こんにちは!

脳性麻痺の治療、手術の続きです。

 

痙縮を改善する手術は以下の3つがあります。

1.整形外科的手術(筋解離術、腱延長術)

2.ITB療法(バクロフェン持続髄注療法)

3.SDR(選択的脊髄後根切断術)

 

今回はSDRについて書きます。

3つの中で最も行っている施設の少ない症例数はまだ少ない手術方法です。

 

SDRは手術で脊髄の後根を細分し、一本ずつにわけて脊髄の一部を切除する手術です。

脊髄は前根と後根にわけられます。

前根は中枢から末梢への運動神経や自律神経であり、後根は末梢から中枢への感覚神経です。

SDRでは痙縮の原因となる異常な反応が出る脊髄後根細糸を切断します。

全体の半分前後のの細糸を切断します。

脊髄は細い神経の束であり、それを1つずつにほどいて手術中に電気刺激して異常な筋緊張の原因となる神経を切除してしまいます。

神経を切る!?というと過激な気がしますが、痙縮では異常に神経が高ぶっているため神経を切って普通の筋緊張に落とすイメージです。

通常8歳未満のお子さんに行われます

手術で神経を切るため、8歳以降で手術すると下肢にしびれなどの感覚障害がおこるためです。

 

脳性麻痺の痙縮は神経の異常な高まりが原因なので、その原因自体を治療する方法です。

非常に効果は強いですが、一度切った神経は再生しません

腱延長は数年で腱の再生があり、ITBも薬の量で調節できますが、SDRは不可逆的で一度治療すると元に戻すことはできません

神経を切除しすぎると筋肉の緊張が低下しすぎて緩んでしまうリスクはあります。

日本でSDRは東京の東京女子医科大学で以前より行われていて、近年沖縄でも行われています。

SDRをしている施設が少ないため未だ普及した治療ではないですが、近年徐々に手術数は増えています

痙縮自体を根本的に改善する良い治療だと思います。

ただし緩みすぎる症例もあるので、手術適応に関しては未だ明確ではないように思います。

病院、医師によりSDRを勧める基準がいまだバラバラな印象です。

SDRをしても全く痙縮がなくなるわけではないので尖足などは出現することが多く、小さな手術は必要だと言われています。

最近では歩けている比較的軽度なお子さんでもSDRが良いという話もありますが、従来の治療との比較も不十分な印象は受けます。

ただしある程度痙縮の強いお子さんには良い手術だと思います。

おそらく今後も手術数は増えていくと思います。

 

 



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