2023年10月22日
こんにちは!
赤ちゃんの股関節脱臼(先天性股関節脱臼、現在は発育性股関節形成不全)について補足記事です。
以前にコラムで診断としてレントゲンよりも超音波が優れていると書きました。
赤ちゃんの太ももの骨が柔らかくてレントゲンに写らない部分があるからです。
近年整形外科でも超音波を使った診断・治療が普及してきました。
肩の筋肉の損傷や関節の靭帯の怪我を観察することなどに優れていて、多くの病院整形外科部門、整形外科診療所に超音波の機械があることが普通になっていています。
赤ちゃんの超音波診断を行う施設も徐々に増えてきているように思います。
レントゲンだけで異常なしと言われて後で股関節脱臼とわかることも多いため超音波診断が普及することは非常に良いことです。
ただし最近、他の病院、診療所で超音波して異常かもと言われたなどの相談の受診が時折あります。
超音波はプローブと呼ばれる先端の機械を体に当てるだけなので技術的に難しくはないです。
目的の場所をしっかりと映し出す知識と経験があれば問題なく超音波診断できます。
赤ちゃんの超音波診断も最近ではセミナーなど勉強会が開催され知識を学ばれている先生が増えています。
私個人的に思うのは経験が不足するため診断がうまくできないことを危惧します。
現在赤ちゃんの股関節脱臼はそれほど多くなく、1000人の赤ちゃんいれば1人くらいの頻度と言われています。
かつてはおむつや股の開き指導が普及していなかったため現在の10倍ほど股関節脱臼がありました。
現在では布オムツから紙オムツになり、助産師さんなどの股開き指導なので股関節脱臼は減っています。
そのため以前はこども専門病院でなくても股関節脱臼を見かける頻度は多かったですが、現在では赤ちゃんの股関節脱臼を見たことがある先生が非常に少なくなっています。
近年赤ちゃんの股関節脱臼の診断の見逃しが多いのは脱臼を見たことがある先生が減っているのも原因の1つと言われています。
日本では見逃し多いため健診が見直され、多くのお子さんが2次検診対象になっています。
超音波は技術的に難しくはないですが、実際に脱臼があるお子さんを診察したことがない先生がほとんどだと思います。
こども専門の病院で勤務していた私でも実際に診断するのは年に数人程度で、現在のクリニックでも股関節脱臼があるお子さんは多くて年に1-2人程度です。
私自身もそうでしたが、実際に脱臼しているお子さんを何人か経験しないと本当に正常か異常かの診断がしっかりとできなかったです。
異常をみたことがないと正常といいきれないと思います。
超音波診断の普及はよい流れですが、本当に脱臼しているお子さんが多くないため超音波をしても見逃されるお子さんが現れるのではないかと危惧しております。
ただしレントゲンだけして異状なしと言われる状況よりは遥かにましです。
超音波して怪しければ紹介される先生も多く居られるので、よい流れになればとは思います。