コラム

2021年4月30日

赤ちゃんの股関節脱臼について 日本の現状


こんちには! 前回の続きで未だ股関節脱臼の話です。

今回はちょっと前に判明した日本の股関節脱臼の診断の遅れについてです。

 

2017年に非常に残念な状況が報告がされました。

日本の股関節脱臼の多くが遅れて診断されるのがことが判明しました。

生後半年以内に診断がもちろん多いですが、

この図のように1歳以降で診断された赤ちゃん(もうすでに赤ちゃんじゃない?)15%!!

3歳以降(とっくに赤ちゃんじゃない!)で3%も居ました!!!!!!!!

日本ではほとんどの赤ちゃんが3,4か月健診を受診しているので診断ができていない(見逃されている)のです。

 

これは2011年~2013年に日本の股関節脱臼の治療を行っている病院の調査の結果ですが、私たち小児整形外科をしている医師からしても驚きの結果でした!

ちなみにこの調査に私は阪大病院で勤務していて3歳以降で診断されて

普通より非常に大きな手術をしたお子さんが複数居ました。

診断が遅れるとその後の治療が大きくなり、外科手術の可能性が高くなります!

さらに成長後の股関節の形も悪い可能性が高くなります!

早期診断、早期治療が原則です。

 

診断の遅れの原因は様々ですが、個人的な意見では股関節脱臼自体が以前に比べて1/10位に減ったため診察できる先生が減っているからだと思います。

一番赤ちゃんを診察している小児科の先生もあまり股関節脱臼を見る機会が減ってますし、最近では専門化が強調されるため整形外科でも背骨の先生、膝の先生、手の先生など細分化されています。

赤ちゃんの股関節脱臼は小児整形外科という専門の医師が主に治療するのですが、全国で数が少ないです。

そのためまずは専門でない整形外科医が診察すること多く残念ながら診断が遅れたお子さんが多かったと思います。

ちなみに現在はこの発表以降の啓蒙活動が普及してより厳しいチェック体制をとっているため以前よりは改善されていると思います。

そのため以前より乳児健診で引っかかる赤ちゃんは増えていると思います。

 

次回は股関節脱臼の最後に実際に健診で異常を指摘された場合の現状について書きます。

 

出典: Journal of Orthopaedic Science. 2017 Jan 22(1):121-126.

愛知県の服部先生らのご報告



コラム一覧へ