コラム

2021年4月19日

赤ちゃんの股関節脱臼について その2 治療


こんにちは! 前回の続きで赤ちゃんの股関節脱臼の続きです。

今回は治療についてお話します。

 

治療

治療は主に超音波の分類(Graf分類・グラーフ分類と呼びます)に基づいて行います。

病院や医師によって少し治療法が異なりますので、1意見としてお読みください。

 

 

右のイラストは超音波の分類です。左は正常の股関節のイラストです。

正常のType Iから骨盤の屋根が浅い Type II、亜脱臼(半分くらい骨盤の屋根からずれている)のType III、完全脱臼のType IVに分類されます。

 

骨盤の屋根が浅い(臼蓋形成不全 Type II)

基本は経過観察です。多くは成長とともに自然に良くなります。股の開きが硬い時には私は短期間だけ装具をつけることもあります。大きくなってから骨盤の手術する場合があります。

 

股関節亜脱臼 (Type III)

リーメンビューゲル装具をつけます。お風呂以外装着して2か月前後使います。

 

股関節完全脱臼 (Type IV)

脱臼が手でさわって元に戻るような赤ちゃんは装具をつけます(クリックといって音がすることが多いです)。

それ以外は病院で持続牽引治療(入院して約1か月足を引っ張って脱臼を治す治療)をお勧めします。

昔は持続牽引治療は一般的でなくメスを使う手術が主流でしたが、現在では他の病気のない方ではほぼ100%メスを使わずに元に戻すことが可能です。

しかし赤ちゃんの股関節は非常に繊細で一気に脱臼を治してしまうと大腿骨に流れる血が途絶える

大腿骨頭壊死という合併症を起こしやすく、大腿骨の変形を起こして大人になったときに

軟骨が傷んでしまう状態を引き起こします。

そのため完全脱臼では一気に戻さずに1か月以上かけてゆっくりと引っ張って戻す

持続牽引治療が良いと思います。

入院が1か月以上になるなど大変ですが、今後何十年と使い続ける股関節を合併症から守るため

必要なことだと思います。

 

大事なのは現在では他の病気を伴わない股関節脱臼はメスを使わずに治療可能で後遺症の少ない治療があるため

心配しないでください!

多くの脱臼のお子さんを診てきましたが、みんな元気に走り回ってます!

 

治療編は以上となります。

 

次回は日本の検診と実際の診療事情についてお書きします。

 

 



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