2025年4月12日
こんにちは!
橈側列形成不全の続きです。
前回治療、主に手術について書きました。
手首を安定させるために中央化手術という手術を行うことが多いです。
今回は最も重度な親指が欠損しているお子さんの治療について書きます。
上図は最も重度な橈骨が全くなくて指も親指がないお子さんのレントゲンです。
親指がない状態を想像してみてください。
ものをつかむときには基本的に親指だけ向きが変わり人差し指から小指と向きをかえてつまみ動作をします。
対立という親指だけ向きを変えるために他の指よりも手首の近くに関節が1つ多く、対立するための専用の筋肉も存在します。
親指がないと物をしっかりとつかむことができません。
そのため橈側列形成不全のお子さんで親指がない場合や親指があってもぶらぶらで不安定な場合は母指化手術という手術が行われます。
J Hand Surg.2017から引用
上図は親指があるけどぐらぐらなお子さんで、親指を残しても機能的に悪いために母子化手術しています。
母指化手術とは人差し指を親指にかえる手術です。
簡単なようですが、指の向きを変えようとすると下の作業が必要です。
1.骨を切って移動する
2.血管や神経がついたまま移動させる
3.つまみに必要な対立するための筋肉をつくる
整形外科は骨や筋肉の手術は得意なので1,3は他の手術でも行います。
2の血管や神経を移動させるのは非常に難しい手術です。
血管や神経は筋肉ほど伸び縮みしなくて、小さなお子さんの血管はもろいので引っ張ったりするとすぐに損傷します。
特に血管は難しいです。
整形外科は血管の手術を行う機会はすくなく、母指化手術ができる先生は非常に少ないです。
動脈だけでなく静脈も傷つけずに移動する必要があります。
もし傷つけると指が壊死する可能性があり、傷つけた際に血管を縫合する技術も必要です。
手術には顕微鏡や倍率の高いルーペが必要です。
恐らく日本で行っているのは数施設だけだと思います。
私の手術の師匠先生は日本でも有数の外科医で日本中から患者さんが来ていました。
ぶらぶらの親指が残っている場合に指を切除して人差し指を親指にすることに抵抗があるご両親もいます。
しかし機能的に親指は非常に重要で、見た目にも4本指でも親指の向きに指がある方が違和感が少なく外観も目立たないです。
以上非常に難しい手術の母指化手術でした。