コラム

2021年4月7日

赤ちゃんの股関節脱臼について


こんにちは!

第1回目の内容はこどもの整形外科の代表の先天性股関節脱臼にします。

 

先天性股関節脱臼(あかちゃんの股関節脱臼)

1990年位までは赤ちゃん100人のうち1人以上が股関節脱臼ありました。

現在は1000人に1人程度に1/10に減少しました

その理由は生まれてから股関節をM字に広げるようにしたからです。

 

・以前の布オムツからふわっとした紙オムツが普及して赤ちゃんが股関節を自由に広げるようになった

・保健士さん達がお母さんに赤ちゃんの股関節はM字に広げるものだと啓蒙した

 

実は赤ちゃんの股関節脱臼の多くはは生まれてから起こっていることがわかって最近では先天性という名前を使わなくなってきました。

赤ちゃんの股関節は開いているのが普通だと知っておいてください!

動きにくい服などで股関節が開きにくくならないように注意してくださいね。 

 

股関節脱臼はいつ見つかるか?

 

産院でよく行われている生後1か月での健診

地域の保健センターで行われている生後3,4か月健診

 

特に保健センターでの34か月健診はほとんどの赤ちゃんが受診するため、よく股関節の異常を指摘されます。具体的には股の開きが悪い、太もものしわの数が左右で違う、脚の長さが違うことで整形外科の受診を指示されます。

 

 

現在股関節脱臼の精密検査を指示される基準2項目以上あれば精密検査)

・女児(圧倒的に女の子に多い)

・骨盤位(逆子、お腹の中での姿勢の影響か脱臼しやすい)

・家族歴(親戚に股関節脱臼の方がいると少し脱臼しやすい)

・股関節開排制限(股の開きが悪い)

・大腿部の皮膚溝の左右差

・脚長差

 

実際私は今までに1000人以上の保健センターで異常を指摘された赤ちゃんを診察してきました。

経験では異常指摘された赤ちゃんの内、実際に股関節の病気があるのは5%以下です。

検診で異常と言われてもほとんどの赤ちゃんは異常がないので、必要以上に不安にならないでください

 

股の開きが悪い

脚の力が強い子は股を開こうとすると抵抗が強くて硬いように感じることがあります

よく脚つっぱる子や生後4,5カ月で寝返りしているような発達の早めの子に多いです。

 

大腿皮膚溝の左右差

ほとんどは肉つきの左右差です。

生後3,4か月の赤ちゃんはムチムチしていて太ももに皺があって、よく左右差もあります。

股関節脱臼の時は脱臼している方の脚が短くなるため。

脱臼している側の股の付け根の皺が多くなることが多いです。

膝近くの皺の左右差はほぼ肉付きの左右差と考えて良いと思います。

 

脚長差

赤ちゃんは小さくて寸胴体系なので脚長差を正しく診断するのが難しいです。

上向きに寝転んで踵の左右差でみるのは間違いが多いです。

じっとしてくれないのと骨盤が触知しにくくて体がまっすぐになっていないことが多いからです。

整形外科ではアリス兆候という膝立をして膝頭の左右差をみることで脚長差を判定します。

ただし、脚をしっかり曲げてみないと正確でなくなるので注意してください。

 

診断はレントゲンと超音波が主流ですが、圧倒的に超音波が優れてます

整形外科は一般的にレントゲンをよく使いますが、赤ちゃんの股関節は軟骨の部分が多くてほとんどうつりません。

そもそもレントゲン撮影時にじっとしてくれないので正確に観察することも難しいです。

レントゲンで脱臼がわかることもありますが、私が見てもレントゲンではわかりにくい脱臼の赤ちゃんもいました。

超音波は放射線をつかわずに直接股関節を観察できるため、強く超音波をお勧めします。

残念ながら日本ではいまだにレントゲンで診断の方がずいぶん多いという残念なデータがあります・・・。

 

上がレントゲン

3,4カ月では軟骨が多く股関節は正確に見えません

下が超音波

股関節がダイレクトに見えて放射線も使いません

 

長くなりましたので次回は日本の股関節脱臼の診断の遅れや治療についてお話します。

 

出典:日本整形外科学会 日本小児整形外科学会 乳児健康診査における股関節脱臼 一時健診の手引き



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